人生の教科書が欲しい

物事を学ぶ際、理論から入る場合と経験から入る場合がある。これらは下表のような特徴があるように思う。

f:id:D231618130:20210313212305p:plain

実感しやすさに関しては経験に軍配が上がる。理論は抽象的になりがちなので我々の生きる具体世界と紐づけるのが必ずしも容易ではない。同様に、現実への立脚についても経験の方が優れているであろう。

その一方で、経験だけでは偏る場合も多い。理論は大所高所からシステマティックに記述されているので、自分の個性や経験(の偏り)に由来する認識の誤りを補正してくれる。また、学習速度に関しても、ある程度までは座学でいける理論ベーストラーニングの方が高いであろう。さらに、理論を学んでいる限りは傷つけられることは少ない。

このように、理論と経験はそれぞれ違った特徴を持つ。それゆえ相補的に活用されるべきであるのに、現状、数学は理論から学び、人生は経験から学ぶことになっている。

f:id:D231618130:20201010083331p:plain

世の中には理論から学ぶのが得意な人と、経験から学ぶのが得意な人がいる。前者は数学が得意になり、後者は人生が得意になる傾向がある。しかし、逆はどうだろうか。理論から学ぶことに適性を持つ人がもっと人生を学べるようになっても良いのではないか。つまり、人生において大切なことを理論化・体系化してもよいのではないか。

人生の教科書が欲しい。人生において大切なことを公理から演繹的に導出したい。そのための公理系を開発したい。それは多種多様な観点から十二分に検討されたものでなければならない。

人生の問題集も欲しい。教科書で学んだ理論を適用できる問題演習の場としたい。実生活も演習の場だが、(1)自分のレベルに合った問題が与えられるとは限らない、(2)適切なフィードバックが与えられることは少ない、という課題がある。問題集では、現実に即した状況を提示し、「〇〇、□□、△△の観点を持つ人は、この状況をそれぞれどのように捉えているか。各400字程度で記述せよ。」のような問題を出す。世間には多様な観点から物事をとらえる人がいるということを理解してもらう試みである。

「そんなこと実生活から学べよ」と思う人がいるかもしれない。あなたは経験から学べる人なので、そのまま続けてください。これは経験から学ぶことを苦手とする人を対象としています。

「人生に正解はない」と言う人もいるだろう。おっしゃる通りです。ただし、ある程度のレベルまでは「正解っぽいもの」はあるので、それを体系化することやとりあえず学んでおくことにも価値はあると思います。ある程度学べたらあとは「人生に正解はない」という価値観をインストールすればよろしい。

「人生を合理的に扱いすぎだ」という考え方もありそうだ。そうかもしれない。確かにこれには反論できない。価値観の違いですね、としか言えない。ただし、人生や気持ちといった情緒的側面が強い対象であっても、ある程度割り切って捉えた方が結果的にうまくいく場合はあるんじゃないの、とは思います。

「お前に情緒はないのか」って? 頑張って発達します。