因果関係の重要性と、専門性の定義

この記事では世界の捉え方を一つ示した上で、専門性に対する定義を与えたい。

 

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青色の領域を見ていただきたい。感染症の流行、停電、地震、体の動き、人の発言や行動。いずれも知覚しやすいものだが、これらは結果にすぎない。例えば感染症の流行をもたらすものは病原菌であり、停電をもたらすものは発送電システムの不具合である。同様に、地下や水面下の状態が原因となって地震が起き、骨や筋肉が原因となって体の動きが説明され、人の心や頭が原因となって発言や行動が現れる。これらはいずれも赤色の領域に示されている。

ここで一つ気づくかもしれない。結果は知覚しやすく、原因は知覚しにくい。病原菌、発送電システム、地下や水面下の状態、骨や筋肉、心や頭。目に見えづらいものばかりである。すなわち、世の中には「知覚しづらいものが原因となって知覚しやすい事象が生じている」という論理構造がある。我々が気づくのはまず結果である。感染症の流行という結果にまず気づき、適切に対処するために「原因」を探っていく。停電という結果を見て、発送電システムに原因を求める。人の発言や行動から、その裏にある思考や感情を探っていく。これらを原因究明という。そうすることで目に見えやすい「結果」をうまく制御することができるのである。ここでは結果を「現実世界」、原因を「本質世界」と呼ぶことにしよう。本質世界と呼ぶのは、それが現実世界をうまく説明してくれるからだ。

 

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専門性の一つの定義は、世界の裏にある因果関係を適切に扱える力だと思う。専門性がなければ、問題解決の際に「現実世界の問題」から「現実世界の解決策」へと一直線に行きがちである。そう、ルート1のように。一方、専門性を持つことで違ったルートを採用することが可能となる。専門性があれば、現実世界の問題を見るとそれを本質世界の言葉で捉え直すことができるようになる。本質世界は抽象化・体系化されており、数多くの知見が蓄積されている。それらを活用すれば本質世界で問題を解決できるかもしれない。後はそれを現実世界に引き戻すだけだ。このように、専門性を獲得することの価値は「問題解決のための新たな手段を獲得すること」である。一般にそれを「新たなものの見方を手に入れる」と言うのかもしれない。